某シェアハウス問題に関して考える・・・
先日S銀行さんが問題のシェアハウスに関して見解を述べた記事を見ました。
この首都圏を中心に一気に拡大して破綻したシェアハウス【かぼちゃの◯車】問題。
1月のスマート◯イズ破綻くらいから興味深く事態の推移を見守ってきました。
賃貸経営を行なっている方やこれから賃貸経営を行ないたい方にはとても興味深い内容かと思いますが、皆様はこの問題に関してどの様な感想をお持ちでしょうか?
今更ながら、この問題の不動産業勤務者としての私見を書いていきたいと思います。
まずは問題の内容を私なりの解釈で書いていきます。
経緯
- 新築シェアハウスを首都圏で販売、サブリースで新築ながら高利回りを実現。
- 高利回りの理由は上京したての入居者に就職あっせんを行ない紹介料を得られるため賃料以上のサブリース賃料を支払う事が可能である事が謳い文句。
- 就職斡旋を効率よく行うためにリビング等の共用部を極力無くし、快適性を極限まで無くし、出来るだけ早期の退去を促す事でさらなる収益を得る事が出来ると多くのオーナーを募る。
- 士業・医師・一流企業のサラリーマン等の高属性の方々が高利回り&就職斡旋で上京した方々に対して社会貢献出来るとの言葉に釣られS銀行の融資にて物件を購入。
- S銀行の融資は4%台の高金利。諸費用ローンは更に金利が高かった。
- S銀行からの融資に際して、個人の属性の改ざんがあった。
- 当初は入居・就職斡旋・新築が上手く廻り順調な借り上げが出来ていた。
- 自社新築シェアハウスが過剰になり、入居率が激減。
- 就職斡旋が立ち行かなくなる。
- スマート◯イズ破綻によりサブリース破綻。
- オーナーが通常のシェアハウス賃貸だと返済すら出来ない状況を把握。
- 実は購入金額が相場よりも高額だったと気付く。
- オーナーの支払いが多方面に中抜きリベートとして搾取されていた事が発覚
- オーナーはどうにも出来ない状況で、S銀行を個人属性の改ざんに関与した上の不正融資だったと訴える。
こんな経緯でしょうか・・・
経緯に関しての私見
オーナーとしては詐欺としたいところでしょうが、これって詐欺でしょうか?
スマート◯イズの詐欺行為なら契約の無効を訴え契約の取り消しを主張するのでしょうが、スマート◯イズはサブリース契約を履行しておりました。さらにサブリース物件の入居募集も行なっており、TVCMも行ない入居付、就職斡旋を行なっておりました。
結果破綻ですが、上記履行により詐欺には当たらないのでしょう。しかし限りなく詐欺的スキームではありますよね・・・
相場より高額な土地購入費もオーナーとしては問題にしたい所でしょう。
しかし、元々不動産とは相対取引。
相場はあれど、定価は無いもの・・・
たとえ3為4為だとしても買主が納得した以上問題にする事は難しいでしょうね・・・
建物の高額な建築費もオーナーとしては問題にしたい所でしょう。実際の建築費はかなり安いものだとも聞きます。
しかし、これもオーナーが施主として納得して契約したものでしょう。中間マージンがどれだけあろうとも、中抜きは健全な商取引でも多々行われるもの。業者が利益を追求する事は当たり前の事でもあります。
どの道破綻してしまったスマート◯イズからは何もとれないと思ったのか最終的にS銀行に矛先を向けたオーナーさん達が多いようです。
さてS銀行の責任ですが、これはとても大きいと思います。
しかし・・・それは・・・あくまでも預金者保護と株主への責任であり、借主への責任ではありません!!今回の件で多額の引当金が発生した様です。利益を大きく減らし株主は多大な損害を負いました。
そしてオーナーは実質破綻先になりました。
借主の立場では金融資産改ざんを問題にしたいようですが、私見では共犯です。なぜなら借入の際に借主の協力なくして改ざんは不可能だと思います。そして改ざんを知っていた事が共犯の証拠だと思います。
高金利に関しても銀行は営利企業です。危険な融資は必然的に高金利になります。当然の事ですよね。
そして保証会社付きアパートローンはオーナーの属性に融資しただけで、スキームに関して保証している訳では無い
オーナーとしての問題点
- スマート◯イズのスキームを疑うこと無く信じて契約
- 土地相場すらまともに調べていない
- 建築費相場すらまともに調べていない
- 高金利の理由を考えなかった。
- サブリースはただの賃貸借契約、サブリース会社が破綻したら契約は無いもの、更に当初相場以上で借りていたとしても、賃料の減額請求をされたら基本従うしか無い状況のものを信頼してしまった。
- 短期的な物の見方しかしていない。(物件は老朽化に伴い賃料が低下するのは当たり前)
- 自分で考えていない
- 普通の居住用不動産を購入する程度にしか考えていない(消費者としか思っていない)
- 通常、収益不動産の場合不動産会社は所有権の移転を問題なく行う事が仕事であり、収益の保証なんか考えていない事を理解していない。
- 銀行が融資すれば安全な物件と思い込んでいる。(その理論が通じるなら破綻者なんて出るはずがないし、保証会社貸しではなくプロパー融資が可能になる。そして日本でもノンリコースローンが主流になるはず。)
さて、長々と私見を書いてきましたが、経営も投資も自己責任だと個人的には思っています。
セミナーで進められたから、不動産屋さんが進めたから、銀行が融資OK出したから、本で進めている手法だから、有名大家が勧める物件だから等々購入する理由は様々。
しかし購入する前に考えてみなければならない事が有るはずです。
- 有名大家さんが自分で買わずに人に勧める理由
- セミナーって私もごくたまに講師を行ないますが、必ず目的があり、目的の為の話し方をします。そのセミナーの目的はなんですか??
- 銀行は積算価格を重視します。借主が破綻しても競売で損金を補填できればそれで良いのです。銀行の目的は場合によっては金利のみです。(中には共存共栄で借主の経済的成長が銀行の成長に繋がると考える場合もありますがハードルは高いです)
- 不動産屋はあくまでも売買・管理の専門家である場合が多く、収益物件経営に精通している業者は少ない事を理解する。
- 収益物件専門不動産屋はほぼ例外なく自分が買わない糞物件を紹介している事を理解する。(いい物件は自社で買う)
このシェアハウスを購入した方々は残念ながら考えが甘かったのでしょう。
目新しいスキームほど前例が無いため購入時の安全性の確認と検証は必要でしょう。
そして今銀行に矛先を向けて弁護士を立てて戦っているようですが、勝ち目は有るのでしょうか?弁護士にも食い物にされないか心配です。
今後は適正価格で賃貸し、不足を自己資金ジャブジャブ投入しながら返済するか、退場するかの選択肢しか無いと個人的には思うのです。
今売り出しても誰も買わないでしょうから・・・
この様な逃げ道の無い物件って世の中には多いですよね・・・
購入時には、ほぼ経営の成否が決まってしまうのが不動産経営ですね。
さて今は順調と思っていますが私の不動産経営は人のことが言える程のものなのでしょうか?答えはまだまだ先ですね・・・